優先

2026年 9月号

 自動車を運転中、進行方向の道路上だけを注意しているのでは、左右から走行してくる自動車、横断する自転車や歩行者への対応が遅れることになります。交通事故を防ぎ続けるためには、前方だけに意識を集中するのではなく、左右の安全にも気を配ることが必要です。
 避けるべき危険は、自分が見ている場所だけに潜んでいるのではありません。見ていない場所、見えていない場所の危険を見つけるためには、少し速度を落とし、左右の安全確認を忘れないことが必要です。

 例えば、生活道路を走行中、前方に見通しの悪い交差点があります。左右の道路に一時停止の標識があると、多くのドライバーは「自分が優先だから大丈夫」だと考えますが、そこに、左右の狭い道から、自転車が止まらずに交差点に入ってくることがあります。
 ドライバーは急いでブレーキを踏みますが、止まりきれずに衝突する出合頭の事故、これが事故全体の1/4を締めています。
 この事故を防ぐために必要なこととは、自転車が一時停止というルールをきちんと守ることだけではありません。私たちドライバーが、見通しの悪い交差点では、減速・徐行して左右の安全確認を行うことで、出合頭の事故を避けることができます。
 
 この説明に対して、「そんな自転車のルール無視を許しているから、自転車は自分勝手な運転を繰り返し、事故が多発するのではないか」との指摘があります。
 もちろん、私は自転車のルール無視を認めているのではありません。しかし、自転車のルール無視を批判するだけでは、次の事故を防ぐことはできません。
 次の事故を防ぐために必要なこととは、ドライバーが見通しの悪い交差点で徐行し、左右の安全確認を忘れないことです。
 私は、道路交通法の細かな規定について説明するのは好きではありません。規定があるから守れという指導は、規定がなければ守らなくてもよい、罰則がなければ守らなくてもかまわないという考え方になりがちだからです。

 とはいえ、先の意見に対する回答として、道路交通法第42条について説明しておきます。
 道路交通法第42条では、「徐行すべき場所」が規定されており、第1項では「左右の見とおしがきかない交差点に入ろうとするとき」とされています。しかし、括弧書きで(優先道路を通行している場合は除く)とされているため、勉強された方は、左右の交差道路に一時停止義務がある場合には、自分が優先であり、徐行の義務はないと考えてしまいます。
 しかし、「優先道路」の定義は、第36条第2項で示されており、「標識等による優先道路の指定、中央線・車両通行帯の設置」とされています。つまり、交差点内に中央線の設置されていない生活道路においては、自動車の側にも、道路交通法は徐行義務を定めているということです。
 こうした細かな規定、解釈の存在を知ることも、皆さんの安全運転の根拠となることを期待して説明させていただきました。
 でも、大切なことは、優先かどうかを議論する前に、事故を防ぐ運転をすることです。前方左右の安全が確認できないのであれば、常に減速・徐行して安全確認をすることが、安全運転の基本です。
 そして、落ち着いた気持ちで、ゆとりのある運転を続けることこそ、何よりも優先すべき大切なことなのだと思っています。
 9月1日からは「生活道路の法定速度が30km/h」に改正施行されますが、法律が変わるからではなく、自分の意思で、安全な速度で事故を防ぐ運転をしましょう。