ドライバーのシートベルト着用率は99%を超えたとされているが、ドライバーの死者中、非着用は50%を超えている。さて、この数値は何を示しているのだろうか。
自動車に乗車中、シートベルトを着用していなかった人の致死率は、着用していた人に比較して約14倍とされている。しかし、私たちが常にシートベルトを着用し、同乗者にも着用を促すのは、事故を起こした場合の致死率が高いことだけが理由ではない。同乗者を含めてシートベルトを着用することとは、それが運転することの基本であり、ドライバーとして当然の義務だと感じているからである。
助手席や後部座席を含めたシートベルト非着用の死者数が40%を超えているため、「シートベルトを着用していれば約半分の命は助かったはずです。だから必ずシートベルトを着用してください」と訴える広報がある。同乗者については納得できるが、ドライバーに対する広報としては違和感を覚える。何故なら、シートベルトを着用しないドライバーがその命を失ったのは、シートベルトを着用しなかったことだけが原因ではないと思うからだ。
そのドライバーは、シートベルトすらしないという著しくルールを無視した状態で運転していた。シートベルトすら着用しないドライバーとは、遵法精神に乏しく、他人への迷惑を省みない、自分勝手でわがままなドライバーであることが推察される。そんなドライバーは、シートベルトだけでなく、様々なルールを無視していたことも想像できる。例えば、制限速度を守ることもなく、ながら運転、一時停止違反や信号無視など、自分勝手な運転を繰り返していたのではないかと考えてしまうからだ。
もちろん、すべてのシートベルト非着用のドライバーがそうであると断定するつもりはない。しかし、シートベルトすら着用しないという安全意識の欠如、そしてそれに基づくずさんな運転行動そのものが死亡事故という結果を招いたのであり、単にシートベルトをしなかったことが原因だとは思えないのである。
「シートベルトの正しい締め方」とは、①シートに腰を密着させて座る。②ベルトを付ける。③ベルトの斜めの部分を両手で握り、グッと力を入れて右上に引き上げ、緩みを取る。
特に③が重要で、こうすることによってベルトを腰の正しい置に納め、また、腰に力が入ることで運転することへの気持ちが引き締まる。シートベルトの効果とは、衝突した時の被害軽減だけではない。気持ちを引き締めることによって事故を防ぐ、これもシートベルトの効果である。
さて、安全で快適な交通環境を実現し、交通死亡事故をゼロにするためには、互いにルールを守り、他の車、自転車、歩行者を尊重することが必要である。
しかし、この世はそんなに簡単ではない。必ずルールを無視する者、自分勝手な運転をするドライバーが存在する。いつの世もシートベルトすら着用せず、傍若無人な運転を繰り返すドライバーは存在する。
私たちが目指す安全運転とは、事故が起きたときの過失の軽重を問うものではなく、加害者にも被害者にもならないということだ。つまり、悪質なドライバーとの事故をも避ける必要があり、そのためには、自らルールを守るだけでは足りない。自分が優先であってもそれを過信せず、注意深い運転を続けることが必要である。
加害者にも被害者にもならない安全運転とは、一朝一夕に実現できるほど簡単なものではない。それを自分のものとするためには、私たち一人ひとりが相応の注意と努力を続けることが必要であるが、安全運転とは、私たちが努力して身に付けるにふさわしい十分な価値のある宝物である。