ヒューマンエラー

2016年10月号

 今月号からこのコラムを担当します「小」です。よろしくお願いします。
 さて、「何故交通事故は発生するのか?」という問いかけに対して、「人が運転しているからだ」と答えることができます。つまり、「ヒューマンエラー」であり、日本工業規格では「意図しない結果を生じる人間の行為」と定義されています。
 本誌8月号では、安全運転管理がターニングポイントを迎え、技術的な管理手法が重要であることを指摘しましたが、それは同時に、人であるが故のミスを減らし続けることへの意思表示でなければなりません。
 昔も今も、人身交通事故の40%が追突であることの事実は、いかに人のミスを減らすことが難しいのかを示しています。そして、追突事故を減らすために、「前を見て運転しなさい」というだけの指導は何の価値(効果)も期待できません。誰もが前を見て運転している(つもり)だからです。結果として事故が発生しても、ドライバーはたまたま何かの原因によって前を見ることがおろそかになり、その結果として事故になったに過ぎないと説明します。つまりそれはたまたまの出来事であり、自分の運転が悪かったからではないと考えるからです。
 運転中に携帯が鳴ったからとか、スマホが床に落ちたからつい……という説明を聞きますが、それが原因ではありません。携帯やスマホに気をとられて前方への視線を外すことの危険性の理解、平素から前方左右の安全を確認すること、その認識が不十分であったことが原因に他ならず、携帯やスマホに罪を負わせる言い訳は、責任転嫁も甚だしいと言わざるを得ません。
 人身事故の総件数は平成17年から減少を続けていますが、物損交通事故件数は平成22年から増加に転じており、総件数も増加傾向を示し始めています。
将来においては、自動ブレーキなど事故防止機能の強化、自動運転車両の登場などによって交通事故の減少が予想されますが、こうした時代を迎えた今こそ、ヒューマンエラーによる事故を減らしていかなければならないと考えています。