今年の課題(その1)

2020年 1月号

 新年明けましておめでとうございます。
 さて、交通人身事故はこのところ大幅な減少傾向を示し、昨年は5年前と比較して約33%も減少しています。その要因は、交通指導・取締り、規制・管制を含めた交通安全施設の整備、自動車安全機能の進化、そして何よりも交通安全活動の積み重ねであろうと思われますが、それ以外の社会的な背景についても考えておく必要があります。
 もちろん、私などが考えても正確な回答など得られるはずがありません。交通事故の発生傾向は、発生要因の単純な積み上げによって予測できるものではなく、それぞれの時代の経済状況や社会情勢、生活様式、トレンド(傾向)などを反映させながら複雑な要素が絡み合って変化しているからです。
 それでも、考えてみること、手元にある限られた公表データを分析して仮説を立ててみること、それは決して無駄ではないと思っています。
 
 そうして考えた結果、ふたつの要素を思うに至りました。
 ひとつは少子化です。そもそも若いドライバーと高齢ドライバーとを比較した場合、どちらの事故率が高いかご存じでしょうか?多くの方が「高齢者」と考えているようですが、それは誤りです。テレビや新聞で高齢者の事故ばかりが喧伝されるため、高齢者こそが事故を多発させているように感じられています。
 しかし、平成29年中の免許人口1万人当たりの事故件数は、16-19歳が165.0、20-24歳が98.0、25-29歳が69.7件であるのに対して、75-79歳は58.6、80-84歳は63.1、85歳以上で71.2件でした。つまり、若者の方が事故率が高いのです。そして、その事故率の高い若者そのものがが少子化によって減少しており、更に車離れによって運転する機会が減っています。この10年間で、若者(16~24歳)の県内人口の減少率が3.2%であったのに対して、免許人口は10.7%も減少しています。
 
 もうひとつがハイブリッド=エコ運転です。私が注目したデータが①事故総件数の変化と②人身事故当事者別減少率の変化でした。
 ①事故総件数の変化とは、人身事故だけではなく、物損事故件数を含めた事故の総件数の増減です。それを調べた結果、平成30年までの5年間で人身事故は約30%も減少したのに、事故総件数は僅か0.3%しか減少していないことに気がつきました。
 つまり、人身事故が減少した件数とほぼ同数の物損事故が増加していることになります。そして、人身事故が減少しただけ物損事故が増加することとは、それまで軽人身事故(軽いケガ)だった事故が物損事故(ケガをしなかった)ですんだということになります。
 それは、衝突の被害が軽減されたということであり、衝突被害が軽減される要素としては衝突速度が下がること、車両の衝撃吸収力の向上が考えられます。しかし、この5年間でそこまで急激に車両の衝突吸収力が向上したとは考えられません。とすると、人身事故が減少した主な要因とは、衝突速度が減少したためだということになります。
 次に注目したのが②人身事故当事者別減少率の変化でした。事故当事者とは四輪車とか歩行者などを示しますが、最も多いのは四輪車で全体の7割近くを占めています。その四輪車の事故件数は、平成20年からの5年間ではわずか0.7%しか減少していないのに、平成25年からの5年間で30.3%と大幅に減少しているのです。
 では、この5年間で四輪車に何が起こっていたのでしょうか。
 
   ~ 以下、次号に続く。 ~