伝えること

2017年 2月号

 安全運転管理者の方々が行う交通安全教育は、誰もが知っていることをどのように伝えるのかという難しい課題です。
 「交通事故が多発しているから気をつけてください。」という言葉(アナウンス)をよく耳にしますが、それを聞いても人の運転行動に変化は生まれません。また、「事故原因の40%は追突事故なのだから、前をよく見て運転しなさい。」と指示するだけで追突事故の減少を期待することはできないでしょう。
 12月号では「教えること、学ぶこと」について書かせていただきましたが、では「伝えること」とは何か? それは、「価値観を共有すること」ではないかと思っています。
 追突事故を防ぐためには、前を見ない空白の時間帯をなくす方法と、何よりもその前提となる運転中の気持ちの問題に向けたメッセージが必要です。周知の事実を伝達するだけで人の心理、その行動に変化を与えることはないからです。
 その課題を克服するために必要なもの、そのひとつが考え続けることだと思っています。考え続けることによって言葉が生まれ、それを伝えることによって交通事故防止についての新たな価値観を共有することが可能になるからです。
 安全運転管理者はリーダーですから、それらの課題について自ら考え、そして自分だけが百歩先に進むのではなく、百人の仲間と共に新しい一歩を刻むことが重要です。
 交通安全という聞き慣れた言葉であるからこそ、そこに新たな価値を見つけ、共有することによって社員の安全行動に変化を与えることができます。
 交通事故防止に向けた行動が人の人格そのものの発現であるとすれば、交通安全への真摯な取り組みは社員の資質の向上につながり、事業所(会社)としての組織力の向上をもたらすことになると確信しています。