愛知県がワーストワン返上を目指す理由

2017年 8月号

 車は、幸せを運ぶものです。人を運び、荷物を運びます。恋人を乗せ、愛を運びます。家族を乗せて、幸せを運びます。決して、人を傷付けるために作られたものではありません。

 愛知県で交通(死亡)事故が多い理由を問われることがあります。車が多く、免許人口が多く、道路が長く、交差点が多いなど、愛知県は交通事故が多発する要素をたくさん抱えている事実を伝えると、ならば死亡事故全国ワーストワンも仕方ないですねと同情されます。

 昭和30年代に入り、経済活動の活発化に伴って急増した交通事故は、警察活動だけで抑止できるものではありませんでした。昭和35年には道路交通法が制定され、全日本交通安全協会が再編・設立されました。昭和45年には交通安全対策の総合的・計画的推進を図るため交通安全対策基本法が制定、昭和47年には愛知県安全運転管理協議会が設立され、社会全体での取り組みが今日まで続けられています。

 交通安全活動の取組は、交通(死亡)事故を1件でも減らそうとするものであって、ワーストワンの返上だけを目的とするものではありません。今年(平成29年)は185人以下を目指すとしていますが、それは、184人までは死んでもいいということではないからです。たとえ100人を切ったとしても、99人もの死亡事故は、そのご家族、関係者の方々にとってはその1件がすべてです。私たちはそれを忘れてはなりません。

 私たちの先達が思いと努力を積み重ね、現在の私たちが引き継ぐべき交通安全活動、その目指すべきものとしてのワーストワン返上とは、私たちの可能性を示すものです。

 これまでの官民挙げての取組は、交通死亡事故の大幅な減少という成果を挙げてきましたが、私たちにはまだまだできることがあります。そして将来、この愛知県が恒常的にワーストワンを返上したのであれば、その施策・対策は他府県においても大きな効果が期待できます。つまり、私たちの叡智と努力は、私たちの国、日本全体の交通事故総量を抑制し、死亡事故を無くしていく架け橋となります。

 そのためにこそ、私たちはワーストワンの返上を目指し、これからも皆さんと努力を重ねていくのだと考えています。