日本国憲法と交通安全

2017年 5月号

 5月3日は憲法記念日、国民の祝日です。祝日を祭日と称することがありますが、かつて祭日を定めていた皇室祭祀令が昭和22年5月2日に廃止されたため、現在は法定の祭日は存在しません。その翌日の5月3日、日本国憲法が施行されました。
 日本国憲法の基本原理のひとつが基本的人権の尊重です。基本的人権とは、人が生まれながらにして持つ権利であり、憲法によって与えられた権利ではなく、憲法はこれを保障するに過ぎません。その内容としては、自由権、受益権、参政権及び社会権がありますが、特に現実的な重要性を持つのは自由権でしょう。
 さて、私たちが自由であること、その自由権は憲法が保障してくれますが、それを守るのは私たち自身です。憲法によって保障された自由権、それを守るのは私たちの義務であり、責任だということです。
 昔から当然のように存在するもの、特に目に見えないものは、うっかりすると忘れられ、失われていきます。私たちが最も失ってはならないものが自由であり、人の命です。
 交通事故によって失われるのは、被害者の命だけではありません。そのご家族にとっては大切な人の命を失い、多くのものを失います。そして、加害者もその人生を失い、誰かの支えがなければ生きていけなくなります。当事者の方々にとってその1件の事故がすべてであり、県下の発生件数が100件であろうが200件であろうが何の意味もなく、前年比の増減や全国的な順位など何の価値もありません。
 そして、私たちは自由でなければ人生を享受することができません。喜びも悲しみも人生の大切な要素ですが、そのためには自由でなければなりません。
 私たちが自由であるためには、私たち自身の努力でそれを守ることが必要です。そのための少しの苦労は当然の義務であり、それが現在に生きる私たちの責任でもあります。
 そのひとつが交通事故への気遣いです。些細な事故でも、当事者となれば相当の自由を侵害されます。自由を守ることが義務であり責任であるように、私たちが交通事故の当事者とならないよう、安全運転に努めることも義務であり責任なのだと考えなければなりません。自由を守ることの価値が理解されるのであれば、交通事故の当事者とならないよう安全運転に努めることの価値も理解していただけるはずです。