どこの会社でも合理化・効率化が叫ばれていることと思います。私が所属していた組織も例外ではなく、文書を減らせと本部から指示がありましたが、私は減らす文書を議論する前に、もっと普段の会話を増やせと指示していました。
ひとつの文書を作成することが無駄なのではなく、その文書を作成することの意味や必要性が理解されていないために、必要以上の時間を費やして無駄が生じています。大きなミスが発生した場合でも、大半は関係者のコミュニケーション不足が原因でした。
事故を起こす前に、事故を起こした時のことを想像する力とそれを社員相互で共有する力が必要であり、そのためには信頼関係とコミュニケーションが不可欠です。
つまり、合理化・効率化、そして事故防止の最大の要素とは、上下左右の信頼関係とコミュニケーションであるといえます。
「交通事故を起こすな!」と指示するだけで事故がなくなることはありません。そして、「事故を起こすなと言ったのに!」と事故を起こした部下を叱っても効果は期待できません。
管理者の仕事とは、叱ることではありません。交通事故の危険性を部下と共有し、支え合うことによって安全運転をその事業所の習慣とすることであり、何よりも、それを続けていく努力を惜しまないことが安全運転管理者の仕事です。
そして、安全運転管理を通じて社内の信頼関係やコミュニケーションが深まったとすれば、交通事故防止への取り組みが組織を強くし、社内業務全体への効率化に役立っていることになります。
事業所全体で取り組む交通事故防止という課題、そして安全運転管理とは、単に交通事故の発生に伴う損失の抑止に終わるものではありません。交通事故防止活動とは、コスト削減活動ではないからです。