自転車とヘルメット・その2

2025年 3月号

 (前号から続く)
1 高校生のヘルメット着用促進に関する基本的な考え方
 (1) ヘルメット着用の理由と必要性については、被害の軽減(死亡事故抑止)だけではなく、すべての自転車事故の減少に向けた対策として推進する。
 (2) 高校生は子ども(歩行者)から大人(自動車)へ成長する過渡期にある。自転車利用者としての義務と責任についての理解、そして、歩行者と譲り合うことによる交通事故回避の基本についての理解が必要であり、それは可能である。
 (3) 高校生に対する交通安全意識の醸成とは、高校生の交通事故の減少のみを目的とするものではなく、将来の安全なドライバーの育成を目標とする。
 (4) 今、本気になって高校生の交通安全教育に取り組むことによって、高校生、自転車利用者の安全意識を高め、これまで以上の高い安全意識を備えたドライバーの誕生、そして事故のない安全な交通環境の実現を目指す。

2 高校生に向けたメッセージ
 (1) これまで、高校生の交通事故は、その大半が自転車乗車中でした。そして、皆さんと同じ高校生の命が、いくつも、交通事故によって失われています。
   失われた命が帰ってくることはありません。その事故をなかったことにはできないのです。ならば、私たちができることとは、交通事故を防ぎ続けることであり、そのための少しの努力を惜しんではならないということです。
   ヘルメットを着用するのは、その第一歩です。
 (2) 交通事故で失われるのはあなたの命だけではありません。あなたのご両親は、それまで積み重ねてきた家族の幸せを失います。あなたの成長を見守るという、最も大切な幸せを失います。そして、ご両親ご自身の命が尽きるときまで、あなたを失った悲しみと向き合い続けていくのです。
 (3) 交通事故によって失われた命には名前がありますが、安全運転によって守られた命に名前はありません。失われて初めてそれは現実となり、名前のあるひとつの命が失われるのです。
   それが誰なのかわからない、名もなき命を守ること、そして、自分の人生を失わないための少しの努力を忘れないこと。……それが、私たちの目指す交通安全の姿です
 (4) さあ、皆さん、ヘルメットをかぶって街に出よう!
   新しい安全意識を身に付けた自転車利用者として、歩行者を守る運転をしよう、自動車に気を配ろう。
   ヘルメットをかぶった皆さんが、自転車利用者としての安全行動を通じて、自動車・自転車・歩行者それぞれが、互いに譲り合い、支え合う新しい安全な交通環境を提案するのです。
 (5) 未来の、新しい交通環境を創り上げるのは、現在の大人たちではありません。高校生の皆さんは、新しい自転車利用者として、そして新しいドライバーとして、過去には実現することのできなかった本当に安全な交通環境を創り上げる、そんな役割を担っているのです。
 (6) 安全運転は、自分の人生を守り、誰かの命を守り、そして、まだ生まれていない未来の命を守ることにつながっています。

3 夢を語る、未来を共に語る
  「教えることとは、夢を語ること、そして未来を共に語ること」これは、仏詩人ルイ・アラゴンの詩の一説ですが、私たちが取り組む交通安全活動とは、多くの人たちと手を携え、共に語る私たちの「夢」、交通事故のない安全な社会の実現のことなのだと思っています。