言葉の安全運転管理

2019年 6月号

 言葉は時代と共に変化していくものであり、それを許容していかなければならないことは承知しているが、それでも最近の言葉に悲しさや苛立ちを感じることがある。

その1 … 「申し訳ございませんでした。お詫びを申し上げたいと思います」とは不祥事の発生に対する謝罪の言葉である。しかし、お詫びを申し上げたいと思うのであれば、今は詫びていないことになる。そして、「今後はこうしたことがないよう改善措置を検討したいと思っております」と続く。検討したいとは、改善措置をとるかどうか決めていない、何もしないかもしれないという意味なのに、その点についての指摘はなく、会見は終わる。
 何故率直に詫びないのだろう。「申し訳ありません。心からお詫び申し上げます。こうしたことが二度とないよう、改善策を講じ、徹底して参ります」と言わない。真摯に反省し、改善することが求められているのに、形式的で丁寧な謝罪をすることで批判を回避しようとしている。
 スポーツ選手にも同じ傾向がある。試合に臨む意気込みを聞かれた時、「頑張りたいと思います」と答える。頑張るかどうかを決めるのは自分自身なのに、「頑張ります」と言わない。
 会社の社長も「更なる発展を目指して参りたいと考えております」と発言し、「一層の発展を目指して参ります」と明言しないことが増えてきた。
 選手の意気込みやリーダーの方針表明は、曖昧で遠回しなものではなく、率直にその本心を訴える言葉であってほしいと思う。

その2 … その昔、「ありがとうございます」「おめでとうございます」など、感謝や賞賛の言葉(表現)は、その時の気持ちの表現であるために常に現在形で使われるべきであり、過去形の表現は相手に対して失礼だと教えられ、それが正しいと思い続けていた。しかし最近では、ニュース番組のメインキャスターですら「優勝、おめでとうございました」と過去形で表現し、優勝者は「ありがとうございました」と当然のように過去形で答えている。
 しかし、これが現在の言葉であり、現代人の語感なのであろう。

その3 … 会合に招かれたK署長が来賓として祝辞を述べたところ、司会者から「署長様からご祝辞の方(ほう)を賜り、誠にありがとうございました」とお礼の言葉があった。丁寧な言葉であったが、寒々しい気持ちになった。心を込めた挨拶に形式的な言葉が返ってきたからである。「署長から気持ちのこもったご祝辞をいただきました。ありがとうございます!」と言われたら何倍も嬉しかったはずである。私は署長様とは言わない。署長のK様と言う。それは、その役職に対してではなく、その人に敬意を表するためだ。
 言葉は、丁寧であること以上に、その考えや気持ちを率直に表現すべきものだと思われてならない。

 愛知県は交通死亡事故ワースト返上を目指す。それは、日本中の交通事故、交通死亡事故を減らすリーダーとしての役割、その責任を果たすためだ。自動車の安全性能が飛躍的に向上している現在こそ、交通安全の価値を共有し、高い安全意識を持ち続けることが必要なのだ。……
 こうした言葉に遠回しの表現も過去形の表現もない。交通安全を語ることではなく、交通事故を減らすことが私たちの目的だからだ。安全運転管理協議会という組織を強化し、その組織力を発揮して交通事故を減少させ、死亡事故をゼロにすることが私たちの目的だからだ。