妨害運転罪とドラレコ

2020年 9月号

 平成29年6月、「あおり運転」によって神奈川県下の東名高速道路追越車線に停車させられたワゴン車に大型トラックが追突して夫婦が死亡、令和元年9月には愛知県下の東名高速道路で前を走る乗用車にエアガンを発射するなど、全国で「あおり運転」が続発した。
 今回、「あおり運転」を明確に定義してその厳罰化を図るため、道路交通法の一部改正案が成立し、「あおり運転」については「妨害運転罪」として6月30日から施行された。
 ○ 妨害運転罪
  ・ 目的 …… 他の車両等の通行を妨害する目的で
       ・ 方法 ……    交通の危険のおそれのある方法により
  ・ 行為 …… 一定の違反(※)をした場合
   ※ 車間距離不保持、急ブレーキ禁止違反、進路変更禁止違反、追越し違反、減光等義務違反など10類型の違反
 ○ 罰則
   3年以下の懲役又は50万円以下の罰金
   違反点数25点 → 免許取消(欠格期間2年)
 
 「あおり運転」を受けた場合の対処方法については、
  ① 交通事故に遭わない場所に避難すること
  ② 車から降りないこと
  ③ 直ちに110番通報すること
である。
 ところで、多くの人は110番通報することに気兼ね、遠慮する傾向がある。しかし、警察本部で110番通報を受理する警察官たちは待っている。困っている人を助けるためにこそ神経を集中して通報を待っているのであり、困った時に遠慮は無用である。
 
 さて、「あおり運転」の対策としてドライブレコーダーは特に有効である。「あおり運転」が社会問題化して以来、ドライブレコーダーは急速に普及してきたものの、未だに主婦層のマイカーへの普及率は低調である。
 ドライブレコーダーの装着を躊躇させる要因は費用と手間であろうが、最新式の高額な製品である必要はない。また、「あおり運転」を記録するためには、後のカメラが不可欠だと思われているが、特に危険なのは前方における妨害行為であるため、前方のカメラだけでも有効である。
 また、「あおり運転」を巡るトラブルは様々な形で発生している。ゆっくり走る車の後ろを普通に走行していたのに、突然「あおり運転」を受けたと訴えられる例もあるが、自分の運転が「あおり運転」でないことをドライブレコーダーが証明してくれる。被害事実の証明だけではなく、無実の証明にも有効である。
 
 そして、ドライブレコーダーの価値、有効性とは、交通事故や「あおり運転」の被害を受けた場合だけではない。ドライブレコーダーの映像は、普段の自分の安全運転を記録・証明してくれるほか、ひき逃げ事件や殺人事件の解決に結びつく映像や行方不明者の発見につながる映像を記録していることがある。
 こうした機会にドライブレコーダーを普及させることによって、交通事故の抑止力だけでなく、社会全体の犯罪抑止力、安全力を高めていく必要があると考えている。
 
[追伸] ドライブレコーダーの映像を記録しているマイクロSDカードは消耗品です。使い続けることによって劣化し、書き込みエラーを生じることがあります。肝心な事故発生時の映像が記録されていなかったということにならないよう、時々点検してください。