CSRとCSV

2018年 6月号

 安全運転管理協議会の会員として活動すること、それは新しい時代の交通環境を創造するCSR活動です。

 CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)という言葉が交わされるようになって久しく、それは単純な「社会貢献」ではなく、ステークホルダーからの期待に応えるために企業戦略として対応し、果たすべき社会的責任であるとされています。そして、最近では、CSV(Creating Shared Value:共通価値の創造)という考え方も提唱されています。
 ※ CSV … 2011年にハーバード大学マイケル・ポーター教授が提唱。社会問題の解決を企業活動として取り組むことを通じて、企業と社会の双方が共通の価値を生み出すとする。

 さて、交通安全活動とは何でしょうか。
 交通事故は永年にわたって私たちの安全を脅かし、多くの命が奪われ、失われてきました。交通事故の抑止という課題はすべての人にとって重要な課題であり、これまで道路交通法の整備・取締、交通安全施設の整備、自動車の安全性能の向上などに加えて、多くの方々による様々な交通安全活動が行われてきました。そして、その成果として今日の交通環境が存在しています。
 しかし、現在の交通環境は、これまでにないほどの大きな転換期を迎えています。その主な要因は、自動車安全機能の飛躍的な向上、少子化によるコミュニケーション手段の変化、そして高齢者社会の到来です。
 自動車安全機能の向上は、安全機能に依存する気持ちを生じさせ、ドライバーが行うべき安全運転を蔑ろ(ないがしろ)にする傾向をもたらします。また、少子化世代で育った若者は、社会の中で自分が果たすべき役割や他人の権利と自分の権利との関係などを理解することが苦手であり、交通安全の必要性を知っているだけではその行動に変化を与えることができません。そして高齢者の社会、わずか10年間で高齢者人口が約50%も増え、免許人口は約85%も増加した現在、交通環境に与える影響は計り知れないものがあります。

 こうした社会情勢の中で交通安全活動が着実な効果をあげていくためには、個別の活動ではなく、計画的で組織化された取組が不可欠です。一般的な取組では、人の運転行動に変化を与えることが困難だからです。
 新しい時代の交通安全活動とは、一方的に安全運転を呼びかけるものではなく、交通安全の価値観を共有できるものであることが必要であり、そのためには、その方針やメッセージがきちんと伝えられる組織的な伝達系統が確保されていることが必要だと考えています。

 交通事故抑止が社会全体の課題である以上、その企業が自動車関係であるか否かにかかわらず、企業として交通安全活動に取り組むには十分な理由があります。そして、単独でCSR活動としての交通安全活動に取り組むのではなく、安全運転管理協議会という組織の一員として活動することによって、社会的な価値観の共有と将来に向けた組織的な活動が可能になります。

 私たちがこれから取り組んでいくべき交通安全活動とは、交通安全というものに新たな価値を見いだし、その価値観を共有することによって新しい交通環境を創出しようとするものであり、それはまさにCSV(共通価値の創造)を通じたCSR活動であると考えています。